インプットからアウトプットへ -2017年〜2018年の自分を振り返る-
この記事はwrite-blog-every-week Advent Calendar 2018の10日目の記事です。
BtoBのSaaSを提供している都内の某ユーザー企業にて、エンジニアリングマネジメントをしているnitt-san(Twitter)というものです。
ブログを始めるに至った理由を書こうと思ったのですが、それならいっそ転職してからのことを振り返ってしまおうと筆をとりました。
時系列順に書いていきますが、TL;DRを読めば大体言いたいことは伝わるようにしておきます。
TL;DR
- クソ人間がWeb系ユーザ企業に転職して、危機感からメッチャ勉強して成果を出した
- 管理職になり、もしかしたマネジメントは面白い仕事なのではと思うようになってきた
- 個人的なメモとしてのブログから、アウトプットとしてのブログへ
- 来年は誰かの人生を変えるようなアウトプットを目指して追求する
2017年4月
転職
新卒から9年勤めていたSIerを転職しました。転職までの経緯は、以下のようにちょっと変わったリファラル採用なので、全く参考にはならないかと思いますが、人の縁というものを大事にするといいことがあるかもしれません。
- ひとりSESで入っていた現場で、顧客からは評価されていたものの、上司からの評価が凄く悪く、不満が爆発した
- その時組んでいたバンドのギタリストに「じゃあウチ来る?」と誘われ、「行く行く〜」と即答し転職
- 入社したのは業界売り上げ一位の、従業員1,000人規模の企業で、扱っていた製品のクラウド化プロジェクトに参画
旧転職エントリーはいずれ書こうかと思っていますが、この頃の自分がどういう人間だったかは、以下の通りです。
- 作業スピード・理解・キャッチアップが他人より少し早いことから、自分が有能な人間だと思い込んでいる
- 周りや全体の状況を見ようとせず、振られたタスクを片付けることだけで、仕事が出来ると思い込んでいる
- 『お前は言われたことしかしない』と指摘されても、『悔しかったらタスクをもっと一杯振ってくれれば、片っ端から片付けるからもっと振ってくれ』とあくまでも受け身のスタイルを貫く
- ミスを他人や環境のせいにし、自分は悪くないと平気で考える
- 業務時間外に仕事やプログラミングのことを考えるのはバカのやることだと信じている
- とっくに枯れ尽くした技術領域のスキルと業務知識だけでとりあえず生きていけるため、外の世界で起きている技術変革や知識のアップデートを一切しない
振り返れば振り返るほど、ただのろくでもない人間だったと思います。とは言え、たかだか1年半とちょっと前のことなんですが… 。もしも今の自分が、昔の自分をマネジメントしろと言われたら…… 正直、扱いに困るタイプの人間だと思います。
環境の違いに戦慄し、必死にキャッチアップ
弊社へ入社すると、業務知識どころではなく、まず技術知識を得ることとの戦いとなりました。枯れきった技術知識で高を括っていた人間が、いざ外に出てきたら、世界はとっくに知らないものだらけだったのです。これほどまでに自分は何も知らなかったのかと、強烈な劣等感が襲いました。持っている知識レベルに対して、明らかに分不相応な給料をもらっていることに、恐ろしいほどの危機を感じ、勉強することへの意欲を駆り立てたと思っています。ただただ、自分を誘ってくれた友人の顔に泥だけは塗るまいと、必死に勉強し、概念を理解していきました。
この時点で自分が知らなかったことを、以下に記載します。
- Slack
- Gitの操作
- GitLabというもの
- Markdownの存在
- JSONの存在
- VSCodeの存在
- FrontendとBackendが分離した構成のアーキテクチャ
- RESTfulAPI
- Dockerの存在
- マイクロサービスという考え方
- Kubernates・コンテナオーケストレーションという概念
- GCP, AWS等のクラウド基盤
- Java 7以降への知識
- AngularやReact、Vue.jsのようなFrontend用JavaScriptフレームワークの存在
- NoSQLという概念
確かにこれは転職してから知ったことだよな…と、自分でも書きながら驚いています。逆に言うと、これらを知らなくても特定のSIerでは生きられるということでもありますが…。2018年の6月頃に、JSONという得体の知れない拡張子事件が起き、エンジニア界隈は騒然となりましたが、個人的には全く笑い事ではなかったわけです。自分もJSONの存在を知らなかったのですから。
2017年8月〜9月頃
社内メンバーの中で評価されてくる
必死に技術や知識をアップデートしながら、以下のような業務スタンスで仕事に取り組んでいたところ、あいつは頑張っている、能力のある人間だと認知されるようになってきました。Slackで結構な人数のメンバーにお褒めの言葉をいただくことも増えました。後で知ったことですが、先に挙げた技術への移行は、トップダウンで急速に舵をとられたものであり、元々いたメンバーも充分にキャッチアップ出来ていなかったのです。そこへ後から来た自分が急速に技術をキャッチアップし、疑問点があったらとりあえず聞いておけば、最短距離では無いものの解消していくのですから、『業務知識以外はとりあえず困ったら聞く』対象として、存在価値を発揮出来たかと思います。これが原因でどんどんSPOFになってしまうんですが… この時は誰もSPOFにすらなれていなかったので、結果的にはいい動きだったかなと思っています。また、情報をかき集めていくうちに見つかった、効率が悪い作業や、存在しないせいでメンバー全員が困っているような所にスポットを当てて、改善を進めました。
やるようになったこと
- Slackで誰かが困っているアラートを出したら、その中身を知らなくてもとりあえず首を突っ込み、一緒に考えて答えを出すことを徹底
- 自分宛のメンションへのファーストリアクションは、とにかく速度を重視する
- 誰が何を知っているかを、普段のSlackのいろんなチャンネルをザッピングして、理解しておく
それまで現場になくて、自分が主導してやったこと(一例)
- Markdownによるドキュメントのフォーマットの作成や、格納場所の整備
- Git-Flowをカスタマイズする形で、GitLabを使用しての業務フローの整備
- Confluenceによるナレッジスペースの最適化
- SlackからConfluenceのナレッジスペースへ連携するbotの作成
- 請負ベンダーからの検証作業のやり方の整備
2018年1月
役職がつき、管理職というものと向き合う
年が明け、いわゆる課長代理に該当する役職がつきました。生まれて初めての役職ですし、それなりに喜びはあったものの、分不相応では無いかという思いはまだありました。勉強がとにかく足りません。課長代理となると、管理職に片足を突っ込んでいる役職です。管理職とは何かということと向き合う必要が出てきました。必然的にインプットを増やすため、読書量が非常に増えました。休日にカフェに行って、丸一日本を読む日などもありました。また、タスクに対して自分が作業をするのではなく、配下メンバーに振っていくことを意識的に行うようになりました。上長がやっている仕事を観察し、代理で自分が出来ることは全て代理するようになっていったのも、役職がついてからです。 『役職が人を作る』とはよく言ったもので、働くということに対して責任感というものがついたのだなと感じます。参画するエンジニアと面談をするようになったのもこの頃からです。
2018年5月前後
『エンジニアリング組織論への招待』を読む
経営理論や問題改善にスポットを当てて読書をし続けていたところ、書店でたまたま広木大地さんの『エンジニアリング組織論への招待』と出会いました。ジャケ買いです。
エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング
- 作者: 広木大地
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/02/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る
この本との出会いが、自分の中での仕事観のターニングポイントとなりました。毎日毎日請負ベンダーとの調整で時間が潰れるようになっており、仕事とは本当にこれでいいのかと悩んでいた頃でした。『管理職とは何か』は『マネジメントとは何か』に変化し、マネジメントとは一生を賭けて学ぶことの出来る、面白い仕事なのではと考えるようになりました。
勉強会という存在を知り、顔を出しまくるようになる
この頃ようやく、外部では頻繁に勉強会が行われているという事実を知りました。connpassとの出会いです。初めて行ったのはGCPUG Tokyo June 2018 - connpassです。地方開発拠点のメンバーから「これ行ってきてよ」とリンクを貼られたのがキッカケで、応募してみたら当選したので行ってみました。六本木の華やかなGoogleのオフィス、たくさんのエンジニア、やっていることを堂々と語る登壇者、何を言っているのか全くわからないプレゼン。自分はまだまだ外の世界のレベルを知らず、勉強はまだまだ足りていないのだと思い知らされるのに、あまりにも充分な時間でした。それからは、勉強会に顔を出すために、いかに定時内に仕事を終わらせるかという仕事のスタンスを身につけました。
今年お邪魔させて頂いた勉強会は以下の通りです。自分でも引くぐらい色々行ったなあと思います。
- 6/18 GCPUG Tokyo June 2018 - connpass
- 6/29 『エンジニアリング組織論への招待』の現場改善事例 - connpass
- 7/11 【エンジニア交流会】こだわりの仕事スタイルLTソン - connpass
- 7/19 Mercari Meetup for Microservices Platform - connpass
- 7/24 GitLab Meetup Tokyo #9: Auto DevOps GA 記念 - connpass
- 8/21 Engineering Manager Drink Meetup #1 - connpass
- 9/21 【会場変更!】Goビギナーズもくもく会! - connpass
- 10/18 【エンジニア向け】IT/Web業界のトレンド研究共有会#2 - connpass
- 11/1 Cookpad Tech Kitchen #19 R&Dにおけるサービス開発者の仕事 - connpass
- 11/9 IT技術書もくもく読書会 #1 - connpass
- 11/13 第一回 エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 読書会 - connpass
- 11/26 "GO GLOBAL" meetup #1 - connpass
- 11/27 【特別対談】 ITベンチャーが語るエンジニアリング組織論とは - connpass
- 11/28 Cookpad Tech Kitchen #20 クックパッドのマイクロサービスプラットフォーム現状 - connpass
- 12/5 Management Lab bySELECK ~1on1のスキルを高めるシャドーコーチング #4~ - connpass
- 12/7 【増枠】Engineering Manager Drink Meetup #2 - connpass
- 12/14(予定) Engineering Manager Meetup #3 - connpass
- 12/20(予定) https://lob.connpass.com/event/111180/
2018年9月以降
メンバーと向き合うために
チームとして動くために必要だと考え、これまで上長主導でやっていた配下メンバーの目標設定・評価について、自分メインでやらせてもらうよう志願しました。そうすると、配下メンバーの事をもっとよく知らなくてはいけない。また、困っているメンバーをケアし、コーチングしたいと考え、1on1を始めました。『ヤフーの1on1』や『エンジニアリング組織論への招待』の2章を参考に奮闘していますが、まだまだ難しいなと感じます。
ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
- 作者: 本間浩輔
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/03/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
1on1関連では Management Lab bySELECK ~1on1のスキルを高めるシャドーコーチング #4~ - connpassに参加させていただきましたが、自分が普段やってる1on1を他人とロールプレイしてフィードバックがもらえるという貴重な体験ができたかと思います。
Twitterの活用
それまでは感情を吐き捨てて雑談をするために長年使用していたTwitterを、技術方面やマネジメント方面のアンテナとして利用し出しました。これまでの雑談層とは全く違う、エンジニアリング方面や経営者・プログラマを中心としてフォローを広げた結果、Twitterがこれまでとは全く違うツールへ変貌しました。人は自分を映す鏡という言葉がありますが、フォロー/フォロワーもまた自分を映す鏡なのかもしれません。
メモとしてのブログから、アウトプットとしてのブログへ
2018年11月からブログを始めました。
目的は、読んだ本の内容をまとめたり、顔を出した勉強会の記録をすることで、自分用のメモとして見返すためです。QiitaやGitHub Pageなどでもよかったのですが、あらゆるアウトプットを1箇所にまとめたかったため、ブログを選択しました。
開設当初の目的は思考のアウトソーシングだと思っており、アウトプットそのものではなかったので、誰かに見てもらうことはあまり意識していませんでした。
転機となったのは5つ目の記事である【勉強会参加記録】 ITベンチャーが語るエンジニアリング組織論とは #エンジニアリング組織論 - エンジニアリング、マネジメント、日常、生活です。
自分の中の勉強会の参加記録の立ち位置は、自分の意見を書くよりも、出来る限りその場で話された内容を中心に記載したい、議事録気味にしたいと考えているので、速度重視となります。
この日は登壇の内容が完了したとほぼ同時にブログを公開し、Twitterにハッシュタグを付けてツイートしたのですが、『自分が思っているよりもずっと、記事が求められている』ことと、『アウトプットに対しては、速度というバリューが存在する』ことを実感しました。
行きたかったイベントなので、スピーディなアウトプットがありがたい。
— daisuke sato@ASKUL (@dskst9) 2018年11月27日
【勉強会参加記録】 ITベンチャーが語るエンジニアリング組織論とは #エンジニアリング組織論 - エンジニアリング、マネジメント、日常、生活 https://t.co/2StNvWG1Mg
早速のアウトプットファースト スゴい | ITベンチャーが語るエンジニアリング組織論とは #エンジニアリング組織論 - エンジニアリング、マネジメント、日常、生活 https://t.co/ZYDcZvt1sf
— beppu01 (@beppu01) 2018年11月27日
早い!記録シェアありがとうございます!#エンジニアリング組織論 #BizteX#LOB https://t.co/p7spmiKQCE
— 嶋田 光敏/BizteX Founder/クラウドRPA (@mitsu_shimada) 2018年11月27日
その後『学びを結果に変えるアウトプット大全』を読み、情報は外に出すからこそ現実を動かし、意味があるのだという納得に至りました。
学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)
- 作者: 樺沢紫苑
- 出版社/メーカー: サンクチュアリ出版
- 発売日: 2018/08/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
人間、何が役に立つかわかりませんね。
来年のこと
メンバーと向き合うことを広げる
社内では1on1をしている部門が存在していなかったのですが、自分が始めたのをきっかけに、社内のいくつかの部門が取り入れ出しています。
来年は社内で希望するマネージャー層を集め、社内勉強会を開こうと思っています。
勉強会に登壇する
今年やり残したことですが、LTに登壇出来ませんでした。
IT技術書もくもく読書会 #1 - connpassに参加した時、LT枠で参加した人が不参加となり、枠が余ったのですが、「誰かLTしたい人いませんか?」の問いに手を挙げられなかったことを後悔しています。
来年はそういった突発的なチャンスにも尻込みせずに突っ込んでいきたいと思います。そのためにも日頃からの準備と覚悟が必要ですが…
できれば隔月ぐらいのペースで定期的にLTに登壇したいです。
また、上記と組み合わせて、社外でも1on1にフォーカスしたLT大会・勉強会を主催しようかなと考えています。
エンジニアリングマネジメントを追求する
エンジニアリングマネジメントを実務を通じて追求していきます。
もしかしたらプロダクトを一つぐらい持つ可能性もあるので、あまり大きくは出られないのが難しいところですが…
誰かの人生を変えるようなアウトプットをする
いまこの瞬間に、エンジニアリング界隈でこの人は突き抜けてすごいと思う人が2人います。
ひとりは『エンジニアリング組織論への招待』の著者・広木大地(Twitter)さんです。
ひとりは技術書店5でセイチョウ・ジャーニーを出して話題となったGrowthfactionの発起人・てぃーびー(Twitter)さんです。
お二方とも質のいいアウトプットにより、他人の人生を変えるような活動をされています。
基本的なアウトプットはブログになると思いますが、自分もまた、少しずつ他人の人生を変えられるようなアウトプットができるようになればいいと思っています。
アウトプットを強めるためにうっすら見えてきたテーマは、『具体と抽象の往復による思考力の強化と、それによる言語化能力の訓練』になるかなと感じています。
今後ともよろしくお願いいたします。