【読書感想文】ティール組織 第1部 第1章
本について
- 作者: フレデリック・ラルー,嘉村賢州,鈴木立哉
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
要約と感想
第1部 第1章 変化するパラダイム
- 人類の歴史において、人の意識は発達し、それに伴う組織モデルは進化してきた。
- 本書ではそれぞれの発達段階と組織モデルを、名前と色をつけて呼んでいる。
- 組織とパラダイムは人間の成長に極めて沿った形と見られる。
受動的パラダイム(無色)
- 人類にとって最も初期の発達段階。
- 時代はおよそ紀元前10万年前〜5万年頃
- 家族などの血縁関係という小さな集団
- 自我は十分に形成されていない
- 組織モデルのようなものはまだない
- リーダーシップを発揮する長もいない
- 生まれたばかりの赤ん坊も、これらの人々と同じ発達段階にあり、事故の概念が母親と環境から完全には区別されていない
神秘的パラダイム(マゼンタ)
- およそ1万5000年前らへん
- 集団の規模が小さな家族から、数百人の人々で構成される部族へ拡大
- 原因と結果に対する理解は不十分
- 日頃の行いが悪いと天気が悪くなって天罰が下る
- この不思議な世界を鎮めるため、部族は儀式を行ったりして安心を得ようとする
- 抽象、分類、巨大数といった概念もない。死への恐れは極めて乏しい
- 高齢者は一定の指導力を発揮する
- 生後3〜24ヶ月ぐらいの子供に多く見られる意識の段階
衝動型パラダイム → 衝動型組織(レッド)
- 原始的な王国へと成長する過程で形成された、小規模で支配的な集団
- 現代ではギャングやマフィアにまだ見られる組織段階
- 対人関係に力を行使続けることで、それが人と人を結びつける要素になっている
- 一人の長と、多くの歩兵で構成されている
- トップはその地位にとどまるために圧倒的な力を誇示し、他の構成員を無理やり従わせなければならない
- 恐怖と服従により組織の崩壊を防いでいる
- 安定した環境で計画や戦略を練りながら複雑な成果を達成するには不向き
- 自我は目覚めており、死が現実的なものとなる
- 関心の方向は「現在」に向いている
順応型パラダイム → 順応型組織(アンバー)
- 因果関係という概念は理解されており、人々は線形的な時間の流れを把握し、将来の計画を立てることができる
- 農業が発展可能。農業で食糧に余裕が生まれると、統治者階級/役人/僧侶/兵士/職人と立場が分配できるようになり、国家と文明が生まれた
- 現在では、大半の政府機関、公立学校、宗教団体、軍隊などが該当する
順応型組織の特徴は大きく2つ
- 長期的な視点で計画を立てられるようになったこと。
- プロセスの発明により、過去の経験を未来に複製できるようになった
- 秩序の維持と前例踏襲を何よりも重視し、変化には疑いの目が向けられる
- 状況が変わり、前例がうまく機能しなくなっても、順応型組織は変化する必要をなかなか認めたがらない
- 規模を拡大できる安定した組織構造を作れるようになったこと
- 組織全体は強固なピラミッド構造。上意下達式の命令系統
- 完全なルールの元に統制される根底の考え方は、労働者は常に監督され、指導を受けるべき存在だということ
- イノベーション、批判的思考、自己表現は求められない
- 情報は必要に応じて与えられ、人々は実質的に交換可能な資源である
- 役職、階級、制服を発明し、それを日常的に使わせることによってメンバーを役割に一体化させる
- 長期的な視点で計画を立てられるようになったこと。
順応型組織では社会的な帰属意識が何よりも重要視される。自分はその集団に属しているか、いないか
- 明確な縄張り意識があり、互いの境界線に目を光らせる
- 外の世界を必要としてはならず、従業員は会社に「所属」している
- 終身雇用制を採用し、多くの従業員の社会生活は仕事や職場を中心に営まれている。
達成型パラダイム → 達成型組織(オレンジ)
- 意思決定の基準が倫理から有効性に変わる
- 最善の判断とは、最大の結果をもたらす判断のこと
- 人生の目標は前に進むこと、社会に受け入れられる方法で成功すること、自分に与えられたカードで最後まで全力を尽くすこと
- 科学的な研究、イノベーション、起業家精神への水門を開いた
現代を代表するグローバル企業の組織の構造、慣行、文化は達成型パラダイムに導かれている。
達成型組織の特徴は大きく3つ
- イノベーション
- 現状に疑問を持ち、それを出発点として改善する方法を作り出す
- いつか起こるかもしれない「可能性」に生きている
- 説明責任
- 組織内の多くの人材の知性を引き出すことを競争優位とし、人々が自ら考えて実行できるだけの業務範囲において、権限と信頼が与えられる
- それらを目標管理という形で実現する
- 達成型パラダイムは戦略計画、中期計画、年間予算サイクル、KPI、バランススコアカードなどの経営プロセスを生み出した
- 実力主義
- 一人一人の才能は開発され、だれもが組織全体へ最も貢献できる役割を与えられるべきだという考え方
- 社会的な公平性が画期的に高まり、少なくとも理屈の上では、自分の才能と意欲に最も合った職業を選択する自由を得た
- イノベーション
- 癌化
- 達成型パラダイムは基本的欲求の大半が満たされたのち、次第にニーズを作り出そうとした
- 私たちが本当に必要とはしていないものが増えるほどに幸せになれるという幻想を人々の間に膨らませようとした
- でっちあげられたニーズに基づいた経済は持続できず、成長のために成長を求める段階にきてしまった
- これは医学用語でいう癌である。
- 成長と利益だけが重要で、トップに到達する人生だけが成功だとしたら、トップにたどり着けない自分はなんなのかという空虚感
- 達成型組織での仕事は自己実現のための手段になり得るはずが、仕事の意味へ疑問を持つ結果となる
多元型パラダイム → 多元型組織(グリーン)
- 人々の感情にきわめて敏感で、あらゆる考え方は等しく尊重されるべき
- 公平、平等、調和、コミュニティー、協力、コンセンサスを求める
- ポストモダンの学術思考、社会事業家、非営利組織、地域社会活動家
- ボトムアップによる意思決定を模索し、メンバーの総意に基づく決断を目指す。
- 多元型組織の特徴は大きく3つ
感想
- 第1章第1部、ティール組織登場せず。
- 多くの日本の大企業が声高に自走型の人材を求めているが、そのために特別な施策をとるわけでもなく、順応型組織の構造を貫いているように見える。組織の構造は、組織の思考に沿う、あるいは依存する以上、自走型の人材をたとえ獲得したとしてもすぐにいなくなるのではないだろうか。
- Twitterではよく言われているように、自分が作ったタイムラインが自分の観測範囲となる。自分によく似た考えの人を無意識に集めている結果、そこで生まれたコミュニティのレベルにより、あるコミュニティでは達成型パラダイムを促し、あるコミュニティでは順応型組織への強烈な帰依を、強固に形作ってしまっているように見える。
- 達成型パラダイムにおいては、自己実現を是とした徹底的な実力主義である。そこで敷かれた目標・数値・達成状況に嫌気が差すというのがピンとこなかった。己の自己実現のために設定しきれていなかったのだろうか、あるいは、自己実現を是としても、脱落するとそこで終わりだからだろうか。
- 多元型組織において、初めてサーバント・リーダーシップが提唱されたように、組織の形態や発達段階に即して、マネージャーが取るべきリーダーシップの手法は異なるのだろう。その時その時、最も効果的なリーダーシップを考えて当てはめるべきである。
- おそらく一つの大きな組織において、ある観点では順応型、ある観点では達成型のようなことはあるのだろう。その組織の中においても、小さな組織では順応型や、達成型の組織が取られていたりもするのだろう。重要なのはどの抽象レベルで観測し、適切に把握するべきかだと感じた。